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遠くを見据え深く考える/シリーズ「成熟したオトナ向上委員会」1

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柴田が広報・宣伝プロデューサーを務めるポップサーカス山梨公演にて

あなたは「型」と「模倣」の違いに答えられるか?

柴田が文中で言う様に、携帯電話、特にスマートフォン(スマホ)が普及してから、その使い方に驚く場面に出くわす事が少なくない。ビジネスに限定すれば、名刺の受け方渡し方や、電話のかけ方切り方、挨拶の仕方などマナーには”型”があって、それを入社すれば先輩に習うが、スマホについては歴史が浅く、教えるべき先輩でさえ”スマホに関するマナー”を習った事がないのだから致し方ないのかもしれない。型がないのなら”相手の不快にならぬ様にスマホを使うならどうするべきか”と想像力を働かせて自分で考えるしかない。スマホマナーの”型”を作るのは誰でもない、自分自身だ。型とは文中の”カラオケ”的な模倣精神ではなく、無駄を削ぎ落とした最少最良の解である。柔道、茶道、日本舞踊などには必ず”型”がある。初心の頃は失敗せずに型を真似する事だけで精一杯だが、習い続けると徐々に型の成り立ちがわかってくる。そうすると型が型として長い間受け継がれている所以が腹の底から理解でき、先人への敬意の念が深くなり、そして自分なりの型の解釈で表現できる余裕が出てくる。型とは動きの手本であるが、そこから精神を切り離す事は出来ない。なぜこの動きをするのか?その意味を言えるのが型である。カラオケ的に真似するのではなく「なぜ?」と自問する事を忘れず、型を追求し続ける事が、自分の理想の未来に近づく事の助けになるに違いない。このシリーズでは「成熟したオトナ向上委員会」と題して人間力を鍛える思考について考えていきたい。(編集記)

~シリーズ「成熟したオトナ向上委員会」①~

数年あるいは数十年ぶりに会う友達・知人が素敵な表情になっていると嬉しいものだ。生き様は歳を重ねて顔に刻印されていく。若い頃、見上げるとカッコイイ大人が何人もいたことを思い起こす。いつしか自分が当時見上げていた世代に突入し、次世代へ体現する責務を日々感じている。僕がマナーについて言及することはあり得ない!と深く自覚している(苦笑)。「笑止千万」という旧知仲間の声も聞こえてきそうだ。が、しかし、今回は敢えて大人の立居振舞について述べてみたい。マナーも多岐に渡るのでビジネス周辺に限定した所作としよう。

◆僕にとってのマナーとは

携帯電話の普及は、固有の時間と空間をブルドーザーで整地していくかのごとくフラットにした。会議中、食事中、商談中、会合中、移動車中、これからパッティングというゴルフの最中等々際限なく携帯電話がまかり通る。公共トイレ個室での電話やりとりが空間に響き渡る光景は、携帯に飼われた人間を象徴しているように思えてならない。僕はテーブルマナー等に代表される形式マナーには疎い。むしろ“~をせねばならぬ”的な型を忌み嫌う反逆児だ。だからと言ってフォークで寿司を食べるような行為はしないけどね(笑)。しかし、食事に限らずマナーとは自分の言動が相手や周囲にどのような影響を及ぼすかといった「想像力の顕れ」だと解釈している。そのような観点で社会を見渡すと、至るところで“想像力の欠如”が溢れ返っていることに気付かされる。成熟した大人になるための必要十分条件は幾多もあるだろうが、想像力というエッジが効いた立居振舞も是非付加したい。

◆コピーするか、創造・想像するか!?

『成功ルールが変わる!「カラオケ資本主義」を越えて』で二人の著者ヨーナス・リッデルストラレとシェル・A・ノードストレムは指摘する。カラオケボックスとは、そもそも誰かになるための場、つまり模倣するための場である。カラオケボックスで誰かのオリジナル曲を歌ってその気になるような“模倣ビジネス”を捨て去ることを一貫して訴えている。「ベンチマーク」とか「ベストプラクティス」などと言っているようでは、現在起こりつつある激変を乗り越えることはできない。いまや個人の“ルール破り”がビジネスにおける革新的創造をもたらすのであって、カラオケ的な模倣=過去の成功ルールに従うことは危険に身を晒すことになる!と。著者によると、原題の「KARAOKE CAPITARLISM Management for Mankind」は、「大勢の人を惹きつけようと意識してマイクを握り、声を張り上げる準備のできている人のために書かれた」ことに由来する。ある製品や事柄に対し、大勢の人がそれを支持している場合、その製品や事柄への支持がよりいっそう高くなるといった行動心理学現象のことを「バンドワゴン効果」と言う。バンドワゴンとは、パレードなどの行列の先頭を行く楽隊車。「バンドワゴンに乗る」というと、時流に乗る・多勢に与する・勝ち馬に乗るといった意味になる。僕はバンドワゴンには乗らない。「カラオケ資本主義」という書籍タイトルを見て瞬時に内容が想像出来なかった。しかし、その本質は著者の言葉「過去の人間を模倣するか、自分の個性を表現するかどちらかに決めなければならない」に凝縮される。究極のトレードオフを僕に突きつけていると感じた。自分ではない誰かを演じ、偽りのステージで踊ることは止める!他人の劣化したコピーになってたまるか!

さて、毎回の“お約束通り”かつ“確信犯的”に脱線する。僕はカラオケが大の苦手。絶対音感の無さには自信がある。小学生の頃から校歌斉唱が苦痛だった。“口パク”の連続は人格形成に悪影響を及ぼしたのではないかと心配している(笑)。皆さまの中でフジテレビ、日本テレビ、朝日新聞社に友人・知人(ただし40歳以上。僕が電通在職中に在籍した世代)がいれば「電通の柴田、知っている??」と訊いて欲しい。「知っているよ!柴田を殺すにはマイク1本あればいい!!」と異口同音に応えるはず(爆)。

◆例えば電話応対

電車に乗れば、スマホをいじっている光景が常態化して久しい。ゲームと格闘しているか、SNSに昂じているか。本を読んでいる人に出会うとほっとする。ちなみに僕の同世代(50代)はFacebook(*以下Fb)に浸りきっている比率が高いと思う。たまたま僕の周辺に限った現象かも知れないが(笑)。食事を共にすると、メニューごとに写真を撮り、店スタッフに全体写真の撮影をお願いし、その後は周囲におかまいなく一人黙々とFb投稿に没頭。投稿が終わると、再度会話に参加してくるが、自分の投稿に対するリアクションが気になってしかたない。もはや目前の会話はうわの空。“誰それが〇△□とコメントしてきた”などなどの反応を嬉々として周囲に報告してくる始末。

携帯電話の普及は時間と空間を跳び越え、コミュニケーションを分断する負の効果すらあることをわきまえたい。「今、話してもよろしいでしょうか」は時間帯を問わず冒頭のお約束。しかし“いきなり”要件を切り出してくる方が後を絶たない。食事時間帯にかける時は、丁寧な確認を要することは当然ながら、15時頃にかける際は「三時のおやつ時間ではないでしょうか!?」と一言入れるユーモアと心遣いが欲しいものだ。電話をかけた者が「電話を後に切る」は僕の掟の一つ。アポイント等で電話を頂戴することは多々あるが、この「掟」に倣っている方は滅多にいない。元西日本新聞社専務のH氏は、敬愛する人生の先輩のお一人。Hさんの電話は凄い。僕が切るまで「ありがとう」を永遠に連呼する。僕からかけた電話でもHさんは中々切ろうとしない。「お蔭さまの精神と感謝の気持ち」をHさんから徹底的に教わった。拙著「ビジネスで活かす電通鬼十則」(朝日新聞刊)にも紹介させて頂いたので、興味がある方は是非お読みください。

◆永遠の今

商談、会合中に腕時計を見る行為は慎重を要する。
最近はスマホを腕時計代用しているビジネスマンも増えた。着信やメールやラインが届けばお構いなしに対応し、会話の途中でも堂々と携帯画面をのぞき込んでいる光景が珍しくない。このような現象の背景に何があるのだろうか。本気で話し、本気で聞くという体験が極めて乏しくなったのも要因の一つだと考える。本気の感度が著しく低下している環境下で本気度を充満させることはばかばかしくなる。だから“スマホでもいじりながら”総ての事象に対処してしまうのだろうか。ラジオを聴きながら試験・受験勉強したことを懐かしく思い出すが、現代は”スマホいじりながら族”がビジネス界でもじわじわと増殖している。この“種族”は「忙しい」ワードを多用するのも特徴的だ。哲学者セネカは『怠惰な多忙』という言葉を残した。ただ忙しいふりをして大声で旗振りするだけのリーダーに対して「忙しいからビジョンが描けないのではなく、描けないから忙しいだけだ」と助言してあげよう。自分自身のキャリア・ビジョンを描くということは、「自立」と「自律」の感覚を呼び戻し、アイデンティティの確立をすることに他ならない。日々時間に追われるビジネスマンは「成りたい自分」と「成れる自分」の狭間でもがき苦しむ。成りたい自分と生きがいの追求の原動力には発想の転換が必要。企業の見通しはフォアキャスティング思考が多く、現状追認になりやすい。僕は将来から現在を振り返る「バックキャスティング思考」を薦めたい。80,90歳になった自分を思い描き現在の自分へ手紙を書き、啓示を呼び込む!永遠の今を集中力なく“気が散るまま”に生きるのは成熟した大人の立居振舞とは言えない。(柴田明彦)

柴田が広報・宣伝プロデューサーを務めるポップサーカス山梨公演にて

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