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シリーズ「年齢に見合う仕事をデザインする」Vol.2/帯域幅の広い語り部を目指せ!

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書斎より広い柴田研究室。これから「基地」にするそう。

本シリーズではキャリアデザインの描き方について柴田流の視点を伝えたいと思います。

キャリアデザインの描き方と書きながら、各稿でテーマを設けて書くなかで柴田が伝えたいのは、単なる方法論ではなく、もっと根底にある大事な事、つまり”年齢という時間の経過の中で本質を見失なわず進化すること”に他なりません。

今回テーマにしたのは”インプットとアウトプット”

インプットとアウトプットそれぞれの本質とはなんでしょうか?(編集記)

◆感性のブロードバンド化

規定字数内に収めるため予定稿から削除した文字達、カメラのファインダーから溢れ出た感動的風景達・・・。それぞれの作者は余白に追いやられた“彼ら、彼女たち”にお別れを告げ、一つ一つの作品を創出している。僕たちはある時は読者、リスナー、視聴者、鑑賞者として作品に向き合うが、その現象面に隠された文脈、背景、context、さらに息吹を感じ取るように対峙しているだろうか。視聴情報が溢れた現代社会で、敢えて聴覚に絞って地球の裏側の鼓動、自分が現在存在する空間に流れる風音・雰囲気、そして対峙する相手の話に耳を澄ましているか。この研ぎ澄まされた感性こそが、僕たちの創造力・想像力をブロードバンド化させていくことにつながる。感性の帯域幅を増やすとは「音楽は終わっても旋律はずっと残る」そのような感覚であり意味合いだと考える。ましてやコミュニケーションの達人を極めるならば、この感性は最低必要条件だと信じて疑わない。

◆想像力の欠如

しかし上記感性レベルの“前々段階”と思えるようなコミュニケーションが散見する悲しい現実に愕然となることが多い。情報を自分にとって都合よく翻訳するのは人間の性だ。メールは現代のコミュニケーション手段における重要な役割を果たしている。しかしメールという文語の世界においてさえも、発信者の意図を読み取れない返信が多い。僕は決して「すべき」「であるべき」論者ではない。しかしメール文面を読み返せば陥ることのないデリカシーの無さに出会うたびに寂寥感が溢れて仕方ない。この想像力(社会脳と僕は定義している)の欠如という悲しい現象は口語の世界では更に猛威を振るっている。相手の話を最後まで聞く姿勢がない。相手の話の本質に思いを馳せることなく、枝葉の共通事象を捜す“ジコチュー翻訳機”が作動しまくる。共通項探しに躍起になるあまり、相手の話を中断して共通体験を差し込む。仮に最後まで聞き及んでも「って言うか」という否定的な前振りから相手の内容を一刀両断に叩き切る。そして自説を高らかに強調し自己満足に酔いしれる。会話は本質を炙り出すテニスのラリーのようなものだと考える。だからサービスエースをゲットすることだけに明け暮れていたら会話の進展などあり得ない。さらに言うならば、もう一度この人と会って話したい!というラブコールは永遠に届かないだろう。

◆大学教授

柴田研究室の表札

柴田研究室の表札「教授」と書かれていても実感が湧かないそうです

僕の大学生時代は「ダッファーズ」というゴルフクラブの公認団体を創設し、組織運営に奔走する日々だった。現在は塾内(慶應義塾大学内)最強!と言われて久しい。来年40周年を迎える。その間支えてくれた現役、OB諸氏には深く感謝している。さて当時の僕は、必修の第二外国語(ドイツ語)を落としまくり、3年で初級、4年で中級を取りようやく卒業した次第。電通の内定を取ったにもかかわらず、ドイツ語2単位で卒業できなかったら内定取り消しとなってしまう。あの時の焦燥感は未だ忘れない。そのような僕が今月から某大学の情報マネジメント学部教授に就任した。学生時代から現在に至る、友人、知人の驚く様子が透けて見える(笑)。昨年秋から“非常勤講師”として14コマの講義を受け持っていた。全講義を終了して1月末から2月にかけて久しぶりにデスクにかじりついた。*処女作を執筆した時以来かな・・。溜め込んだ(*一夜漬けは僕の専売特許だが、そろそろ玄界灘・・・)106名×14回分のレポート(約1400枚)を泣きながら丁寧に読み込み、採点し、評価をして提出。4月以降は年間8講座を仰せつかり、〆切ギリにシラバスを提出、ほっと一息ついた頃、某准教授からメールが届いた。

『~前略~突然ご連絡を差し上げるご無礼を何卒お許しください。

先日の教授会にて先生のご経歴を拝見し、慶應の大先輩であられるだけでなく、月例の研究部会でお世話になっている電通様のご出身と伺い、僭越ながらご縁を感じさせていただいた次第です。今月の当該部会で柴田先生のお名前を出させていただいたところ、「鬼十則についての著作もある、社内で知らない人がいない有名人」と電通の部長様もとても驚いて仰せでした。そのようなお偉い方をお招きするのは大変気が引けるのですが、来月〇日の部会にて登壇することになりましたので、4月の“教授ご着任”の前に、本学の教育の一端をご覧いただくとともに、私の拙い研究につきましてもご指導ご鞭撻を賜りたく、思い切ってお誘いのご案内を差し上げた次第です。~後略~ 』*“ ”表記は僕が付けた

教授ご着任??確かに来期から雇用形態が変わるため各種書類の提出を指示されてはいる。毎月開催される教授会にも参加する旨通達も受けた。しかし、僕は現在非常勤講師。常勤になったら教授会にも参加するのね(笑)的なお気楽感覚だった。

しかし、先ほどのメール文面の“教授ご着任表現”が気になる・・・。副学長に確認するべく下記メールを送る。

『改めて確認させていただきたいのですが、4月以降小生のタイトルは何でしょうか?常勤講師??』。間髪入れずに返信が届く。

『柴田先生。回答いたします。4月以降の肩書は情報マネジメント学部教授です。』

狐につままれたという表現は僕の今までの人生で使用したことがない。が、適切な表現が思い浮かばない。怒涛の様な各種書類提出の中、傑作だったのは卒業証明書&成績証明書。提出は“厳封”が条件。成績証明書が気になり、別途一部申請して開封、恐る恐る内容を確認する。Aは“一桁数”だったと思っていたが、何と11個もあったではないか(爆笑)。いかん!本件は口外無用でお願いします。

4/1教授辞令を受け、その後入学式に参列。新入生「誓いのことば」で登壇した3人の学生(3人とも女子学生)のスピーチに感動。あれほどまでの目的意識を持って大学生活を始める彼女たちが眩しく、そして教授職という重責を噛みしめ、自身も宣誓する厳かな気分になった。翌日からさまざまなガイダンスが始まる。教員紹介の機会も多い。僕の大学生時代とは大分違うようだ。大学生時代の僕にとって教授は“雲上人”だった。学業に勤しんでこなかった僕ゆえの幻想のような感覚だったのかも知れないが・・。毎回挨拶内容をチョコっと変えながら楽しむことにしている(悪戯っ子気分)。教務課の皆様も多忙を極めるのが、この季節のようだ。でも教務課の皆様は新米教授に優しく対応してくれる。研究室の鍵を預かる。想定外の広さに驚く。空間デザイナーの素養はないが、この場に新たな息吹を込め、従来の教授研究室とは異質な場を創出するイメージは出来上がっている。弊社名「多様性工房」に込めた想いを具現化する空間に設える。特に水曜日は2限と5限に授業があるが、その間4時間以上ある。この時間の有効活用から始める。

書斎より広い柴田研究室。これから「基地」にするそう。

書斎より広い柴田研究室。これから「基地」にするそう。

◆マニュフェスト

本稿では「感性のブロードバンド化」から始まり、「想像力の欠如」そして「大学教授」と綴ってきたが、その根底に流れるものは「帯域幅の広い語り部」を目指す想いに他ならない。年代をジュニア、ミドル、シニアといった“塊”で分類するのはやめよう。自身の絶対年齢を噛みしめ、たかだか1歳、されど1歳の違いにどのような進化と成長を見出せるかを追究し続けたい。「年齢に見合う仕事をデザインする」とは、そのようなものだと僕は定義付けている。一方、マニュフェストは心の奥底に秘めるだけではなく、絶えず自説あるいは仮説を世間に「晒す」ことも必要だと考えている。世の中にチューニングしていかなくては、独善的なオッサンの戯言と化してしまうからだ。特に僕たち同世代が注意しなくてはならない“罠”であることを肝に銘じる。

と書きつつ新たな一週間の扉を開ける。ファンタスティックに生きるぜ!と言いつつ。(柴田明彦)

_________

インプットは抽象度をあげて幅広く受信し、アウトプットは具体性を持って伝える事。

インプットは年齢と共に蓄積され、アウトプットは年齢と共に変化し続けるもの。

柴田のメッセージはそう受け取れましたがみなさまはどうでしたか?

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