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働く君に話しておきたい、現代日本に切望される真のエリートの条件

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母校現役大学生30人に紛れ込んで喜ぶ弊社代表の柴田明彦

〜いまこそ伝えたい真のエリートの姿〜

今回は精神性の高かった(過去形)日本人と真のエリートについて述べたい。戦後幻想のエリートを量産してきた日本は、現在大きな変革の時期を迎えていると痛切に感じる。今こそ先人の後ろ姿に学び、誇り高き精神性を呼び覚まし、次世代に継承していきたい。

◆ブロードウェイを行進した武士たち

1860年、日米修好条約批准のため派遣された「遺米使節団」の一行が、ニューヨークのブロードウェイを行進した。既に使節団はアメリカ大統領と会見し、そのニュースはアメリカ中に広がっていた。ブロードウェイは「東方の神秘なる国から来た日本人」を一目見ようと黒山の人だかりだった。使節団は、新見正興を筆頭に、福祉村垣範正、目付小栗忠正ほか数十人。彼らは正装である紋付き袴をつけ、腰に日本刀を下げて、歓呼のなかを粛々と行進した。顔をまっすぐ正面に向け、背筋をピンと伸ばしたサムライの姿に、他の外国人とは比べることのできない“気品のよさ”があった。ウォルト・ホイットマンは日本でも『草の葉』で知られる詩人だが、その日見たサムライの感想を『草の葉』の中で書き残している。「西の海を越えて遥か日本から渡来した、頬が日焼けし、刀を二本手挟んだ礼儀正しい使節たち」。「A Broadway Pageant」というタイトルで始まるその詩で、初めて見るサムライの印象を、考え深げ黙想と真摯な輝く目であったと、最高の賛辞を贈っている。

◆真のエリートとは

拙著中国語翻訳版発刊に際し、中国人の読者に宛て下記内容を書き足した。

~宇宙船地球号は経済、外交、食糧、エネルギー、環境等々抱える問題が山積している。日本では21世紀初頭に「持続可能性」というワードが飛び交い、主に環境問題を語る文脈で頻度高く使用された。筆者はこの単語に「どうにか現状のままで推移したい」という消極的ニュアンスを感じて仕方ない。一方で為政者や経営メンバーが自分の在任期間中は穏便に済ましたいという異臭すら嗅ぎ取ってしまう。我々の取り巻く環境(政治、経済、社会等)は常にダイナミックに変動・変化、進化している。そのような各種変動に適応・共生できうる強靭な体質に改善する努力が求められるのであって、座して死を待つことは許されない。

現代の日本にも各種問題が溢れている。最大の問題を一つ挙げろ!と言われれば、「健全なエリート意識の欠如」か「真のエリートが不在」と答える。エリートとは一流大学を卒業し、官庁や一流企業に勤めるという“外見上”の要件に定義付けてしまったからだ。その結果、個の論理を喪失、世間や第三者評価の論理に振り回される“幻想のエリート”を量産してしまった。皆さまの国ではどうだろうか。

本来エリートの精神は「noblesse oblige」に象徴されると筆者は考える。選ばれし者の責務は社会に対して責任を負う誇りと厳しさの両面だ。日本の検察官記章「秋霜烈日」にも厳かであり、崇高な精神を垣間見る。そして行動規範は「背中で体現する」こと。フォロワーを前提としたリーダーではなく、振り向けばフォロワーがいることの違いを噛みしめたい。その分かれ目は利己と利他のせめぎあいかも知れない。現在、中国と日本の外交局面は微妙な線上にある。国家間における己と他の利害関係は一筋縄ではいかいことが多々あることだろう。しかし、地上の目線ではなく、地球的目線でグランドデザインを描く視座を持たない限り、国境・海域といった境界線を越えて、利己と利他がシンクロナイズし渾然一体となって、次世代に贈る夢には昇華しない。

本書は一人の日本人ビジネスマンが中国の次世代ビジネスマンに継承したいメッセージだと思って頂きたい。読者の皆様に伝えたいのは副題『仕事に誇りと自分軸を持つ』に尽きる。根底に流れる理念をプロフェッショナルの気概と言い換えても構わない。プロフェッショナルとはメジャーなスポーツ選手や医者、弁護士など特定分野のエキスパートに限定しているわけではない。職種にかかわらず自分の仕事に対するプロフェッショナル意識を堅持するという意味合いで理解して欲しい。どんなに難易度の高い仕事であっても、現場を離れることなく、逃げださず、問題解決指向のスタンスを維持する信念と勇気、そして強靭な精神力を鍛え上げていくことがプロフェッショナルへの道だ。プロフェッショナル・コードは「顧客利益」「成果志向」「品質」「価値」「全権意識」等。筆者はこの中でも特に自分の仕事に対する全権意識に注目する。仮説を構想し、その仮説複数案から選定し、その行動プランをやり遂げ、結果に対する総ての責任を負う覚悟。スタンドプレーを推奨している訳ではないが、自己決定と自己完結する気概だけは持ち続けたい。歴史を振り返り、創造と変革の騎手は誰しも一人称で語り、ある成果を創出し、社会に貢献してきた。英雄が旅に出るのではなく、旅に出てから英雄になる。不安と不確実性に満ちた中で、不連続面を飛び越えて行く先に創造と変革の女神が微笑む。筆者はそう信じている~

◆自分の目で見て、自分の頭で考え、自分の言葉で話す。

ブレない基軸力・自分軸はエリートの必要条件の一つだと考える。皆さまは、靖国神社にある「ラダ・ピノード・パール博士」の石碑をご存知だろうか。未だご覧になっていなければ是非!でも行けない方のために(笑)石碑に刻まれた内容を紹介したい。

『~意見書の結語~時が熱狂と偏見とをやわらげた暁には、また理性が虚偽からその仮面を剥ぎ取った暁には、その時こそ正義の女神はその秤を平衡に保ちながら、過去の賞罰の多くにそのところを変えることを要求するであろう。ラダ・ピノード・パール博士』

そして以下の説明文が記されている。

『ラダ・ピノード・パール博士は昭和21年5月東京に開設された極東国際軍事裁判所法廷のインド人代表判事として着任され、昭和23年11月の結審・判決に至るまで、他事一切を顧みる事無く、専心この裁判に関する膨大な資料の調査と分析に没頭されました。博士はこの裁判を担当した連合国11箇国の裁判官の中で、唯一人の国際法専門の判事であると同時に、法の正義を守らんとの熱烈な使命感と高度の文明史的見識の持ち主でありました。博士はこの通称「東京裁判」が勝利に驕る連合国の、今や無力となった敗戦国日本に対する、野蛮な復讐の儀式に過ぎないことを看破し、事実誤認に満ちた連合国の訴追には法的根拠が全く欠けていることを論証し、被告団に対し全員無罪と判決する意見書を公にされたのであります。~後略~』。

この石碑とキャプションを目にした時の衝撃はあまりにも大き過ぎた。東京裁判についての見解を今ここで述べるつもりはない。ただ自分なりに、当時流れる空気とラダ・ピノード・パール博士の置かれた状況を想像してみた。そして自分の体験してきたビジネス・シーンと重ね合わせて内省してみると、不甲斐ない自分の姿が次々とフラッシュバックする。大人数の会議で自分の考えとは真逆の方向に大勢が流れ、その場で挙手して立ちあがり異論反論できなかった自分。世間や組織の目が気になり、しがらみに囚われ、日常に振り回され、多忙を理由に問題を先送りにしてきたこと。水が低きに流れるが如く、安易な選択をしてきたことなどなど。偽りの満足感から脱却するのは容易ではない。ではどうするか!?

そのような弱い自分をもすべていったん受容して、認めことだ。そう開き直る。そして自分と真摯に向き合っていくしかない。基軸、自分軸がブレそうになると、この石碑がカンフル剤の役目を果たしてくれる。(柴田明彦)

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